こんなときどうする?


裁判員制度が始まることへの対応

 

平成215月から裁判員制度がスタートします。それに伴い、会社ではどのような準備をしておけばいいのでしょうか。

1.裁判員制度とは

裁判員制度とは、国民が裁判員として刑事裁判に参加してもらい、被告人が有罪かどうか,有罪の場合どのような刑にするかを裁判官と一緒に決める制度です。会社に関係するポイントとして、次のものがあります。

 ・社員が裁判員になった場合、裁判員を原則として辞退できないので、仕事を休ませなければならない(労働基準
 
法第7条)。
・裁判は基本的に連日で開廷されるが、7割の事件が3日以内、約2割が5日以内、約1割が5日を超える

・裁判員として仕事を休んだことを理由に、解雇等の不利益な扱いをすることは禁止(裁判所法第100条)。
・裁判員や裁判員候補者等になって裁判所に行く社員には、旅費と日当が支払われる

これらのことより、会社としてはその休業期間を会社の事業運営上、制度上どのようにするかが問題となります。

2.裁判諸制度に対応するための留意点

@ 事業運営上の留意点
   会社として備えておく必要があるのは、次のような点です。
  どの社員が休むか
  どの時期に休むか
  ・休む社員の職務の内容と責任の度合い
  ・休む社員が担当する職務の納期
  ・休む社員の業務が関連する顧客、社内他部門の把握
  ・(ケースにより)休む社員の職務をカバーする人(たち)の選定と伝達
  ・(ケースにより)休む社員からその職務をカバーする人(たち)への引き継ぎの指示

A 社内制度上の留意点
  ・休む社員の休みの位置づけ
  ・休む社員の休む期間の賃金の扱い
  ・裁判員制度によって社員が休む際のスムーズな事業継続のための指針・ルール作りと周知
  ・裁判員制度で社員が休むことの就業規則での扱いの明示

3.スムーズな職務継続のために

裁判員の選任手続期日の知らせは、選任手続期日の6週間前までには発送しなければならないとされており(裁判員規則19条参照)、実際に裁判所に行くのは知らせを受け取ってから約6週間後です。そこで、次のような社内ルールを定め、周知させてはいかがでしょうか。

@ 選任手続期日の知らせを受け取った社員は、速やかに上長にその旨報告する
  裁判員になったことを上長に報告することは差し支えありませんが、報告を受けた上長がこれを公にすることは法律
 
 で禁止されています。

A 上長はその社員が裁判所に出向く○日間前までに次のことを書面でもって報告させる
   a.担当している職務の内容、進捗状況(ペンディング事項)、納期、問題・課題点、等
   b.休んでいる期間中に行わなければならない顧客への連絡事項
   c.休んでいる期間中に起こりうる顧客からの問い合わせ等に対する回答事項・応答事項
   d.(必要な場合)休んでいる期間中にその代わりとなる社員の選任・業務の引継ぎや割り振りと指示
   e.(必要な場合)休んでいる期間中に社内業務が滞らないようにするために、他関係部門とその担当者氏名、業務
     状況の連絡と確認
(引継ぎ者がある場合はその紹介)

   f.その他

B 裁判所に出向く前にその社員から顧客に対して受注業務等の進捗状況等休んでいることで顧客に迷惑がかからないよ  う業務情報を報告させておく

C 同様に、社内の関係部門に対して業務に支障が出ないよう休む期間中の段取りを連絡させておく

4.社内規定を定める

裁判員制度に選任され、会社を休む場合、その休みの取り扱いを決めておく必要があります。

@ 休みの位置づけをする−「特別休暇」「有給休暇」「出勤扱い」「欠勤扱い」

大阪信用金庫の調査によれば、「特別休暇」扱いにする会社が多いようです(大阪信用金庫 08.6「中小企業の裁判員制度に対する意識調査」)。

A 休む期間を有給にするか、無給にするかを決める

有給か無給かは、会社の判断によります。「特別休暇」扱いにして「有給」にする会社が多いようです。

裁判員として裁判所に出向くと、日当が支払われます。このことから無給にするとする会社もあります。また、「有給休暇」扱いにすることも考えられますが、この場合ですとすでに有給休暇を使い果たしている人のケースを考慮する必要があります。裁判所としては、「裁判員としての仕事を行うための特別な有給休暇制度をつくっていただくことが重要」として休暇制度の導入の検討を求めています。



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