こんなときどうする? 


解雇にかかわる対処・対応について(普通解雇)


 会社の事業運営がどうにも立ち行かなくなり、万策尽きてやむを得ず決断する解雇を整理解雇といいます。これは、「こんなときどうする? その1」で述べました。
 基本的に、社員を解雇するということは、その人を路頭に迷わすことになってしまいかねません。そうはいうものの、会社にとってその人が原因となり、会社に影響が及ぼされるようであれば、なんらかの対策を講じなければなりません。
 ここでは、「普通解雇」について説明します。


普通解雇とは

 社員側にある原因を理由として、会社の都合で辞めてもらうことをいいます。
 社員側にある原因とは、次のようなものです。

1. 
勤務成績がよくない、職務能力が欠如している、勤務の態度がよくない 等
2. 
私傷病(プライベートでの病気やけが)で働けない
3. 
職務命令に違反する(従わない
4. 
義務を忠実に果たしていない
5. 
暴力をふるったり、暴言を吐く
6. 
仕事をしているなかで不正な行いがあった
7. 
一つひとつを取り上げたら解雇までは至らないが…

 見ておわかりのように、こうしたケースが発生した場合、「言った、言わない」、「やった、やらない」といった基準があいまいになりがちです。したがって、次の基準を明確にしておく必要があります(
妥当性の検討)。

○ 解雇の理由が客観的にみて合理性がある(
客観的合理性
  a. 解雇する理由がある。
  b. その理由が解雇するに値するものである

○ 社会的に見て解雇が相当である(
社会的相当性
  a. 解雇される人の行いが解雇するに値するものである
  b. その処分が社内での同様のケースの処分と比べて均衡が取れている
  c. その人の勤続年数、生活状況、転職の可能性の有無を考慮

 こうしたことから、どんな場合に解雇をするかといった理由をはっきり決めておかないと、後でもめる原因となるわけです。このことを就業規則に定めておくことで、会社も、社員も、両方ともがその内容を確認し、決まりを守ることをとおして、会社の秩序や風紀が守られ、経営方針や経営目標に集中できるということです。


会社・社員が後でもめない(もめにくくする)ための注意点

 就業規則に解雇の理由を載せたからといって、これで100パーセントまかり通るというわけではありません。解雇は社員の生活権を奪う恐れがあることですし、就業規則に定めたとしても条項の解釈の相違も起こりえます。手順や段階等その運用についての注意点を次に述べます。

1. 勤務成績がよくない、職務能力が欠如している、勤務の態度がよくない 等
  @ 事実の確認
    上記の行為が認められたとして、会社はまず会社側の解釈と意向を該当者へ説明、注意・指導・教育等を該当者に施し
   ます。その上でなお改善の見込みがないと判断された場合に解雇の理由として認められることになります。注意・指導・教
   育等の頻度や内容等を検討する必要があります。
  A 程度の確認
    どれほど業務に影響を与えているかを客観的に実証することが求められます。
  B評価の基準が正しいか
    人事考課等の評価基準が明確であり、客観的に合理性があることが必要です。
  C注意・指導・教育等の頻度や中身、機会
    成績や能力を向上させるための会社の取り組みや機会の提供をする必要があります。
  D 配置転換の可能性の検討
    他部門や他職務での可能性を検討することが求められます。

2. 私傷病(プライベートでの病気やけがで、仕事の上でのものではない))で働けない
  @ 就業規則等で休職期間を定めている場合は、休職の扱いとなります。その場合の給与の支払いも就業規則で定めてお
    くことが必要です。
  A 病気やけがの程度
    働くことがまったく困難な状態である等その重大さを確認する必要があります。
  B 病気やけがの回復の可能性
    将来回復する可能性を見る必要があります。
  C 配置転換の可能性
    病気やけがであっても、他の職務に就くことが可能であるかどうかを検討する必要があります。
  D 病気やけがの原因はどこか
    その原因の一端が会社にあるかどうかを検討する必要があります。

3. 職務命令に違反する(従わない)
  @ 職務命令そのものの違法性・不当性
    そもそも命令それ自体が違法であったり、不当なものであったかどうかを検証する必要があります。
  A 職務命令に違反する理由がある
    職務上の命令に従わなかった場合、その理由が合理性をもっているか、会社が命令の内容を十分に説明していたか、従
    わなかったことで会社の業務に著しく支障が出たという事実があったか等を検証する必要があります。

4. 義務を忠実に果たしていない
  @ 会社に実害が発生
    義務を忠実に果たさなかったことで、会社にどのような実害があったかを実証する必要があります。
  A 会社対するに批判
    その批判が根も葉もない虚偽のものであるかどうかを確認する必要があります。

5. 暴力をふるったり、暴言を吐く
  @ 突発的なケース
    過去に発生したことがなく、常態では起こっていない等を検証する必要があります。
  A 突発的ではないケース
    その内容や動機、業務との関係、実害の有無や程度等にもよりますが、注意・指導・教育等を行った上での本人の行動
    を検証する必要があります。

6. 仕事をしているなかで不正な行いがあった
  @ 不正の内容、損害の程度等を検証する必要がありますが、その不正が就業規則に反するのみならず、刑事上民事上に
    かかわる不正である場合、懲戒解雇の可能性を検討することが必要です。

7. 一つひとつを取り上げたら解雇までは至らないが
  それでも総合的に見た場合、会社との間で信頼関係が崩れ、会社への影響(損害)が著しいかどうかを検討する必要があり
  ます。


解雇のチェックポイント

 
社員が欠勤等の行為をしたからといって、すぐに解雇できるわけではありません。次のチェックポイントを参考にしてください。

<欠勤などの場合>
 1.就業規則などでの解雇の事由に該当しているか
 2.欠勤などに正当な理由があるか
 3.欠勤などに対して業務の遂行について等十分な指導や注意を行ったか
 4.本人に改善の意欲が認められないなど反省が見られないか
 5.本人より出勤状況などが悪い者を不問にしていないか

<協調性の欠如の場合>
 1.就業規則などでの解雇の事由に該当しているか
 2.社員が協調する必要がある業務内容や職場環境か
 3.協調性の欠如により業務の遂行等に具体的に支障があったか
 4.会社が注意・指導したり、他の部署への配置をする等改善の機会を与えたか
 5.本人に改善の意欲が認められないなど反省が見られないか

<勤務態度不良の場合>
 1.就業規則などでの解雇の事由に該当しているか
 2.勤務態度不良とみなされる行為が何度も繰り返されたか
 3.勤務態度不良により業務の遂行等に具体的な支障があったか
 4.会社が十分な注意・指導を行う等勤務態度の改善のための努力を行ったか
 5.本人に改善の意欲が認められないなど反省が見られないか
 6.本人より勤務態度が不良の者を不問にしていないか

<私生活上の非行の場合>
 1.就業規則などでの解雇の事由に該当しているか
 2.会社名が報道された等会社の社会的信用・名誉が実際に傷つけられたか
 3.非行行為が他の社員の職場秩序へ悪影響を及ぼしているか
 4.非行行為が軽微な違反ではなく、重大で悪質な違反または犯罪行為であるか
 5.本人に対して他の社員と比較して不均衡な扱いをしていないか


                                  
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