日本に来ている外国人留学生の方々へ To foreign students studying in Japan.
(卒業後も日本に在留し、働きたいのなら…)


 私は日頃から、外国人の方々の入管手続等に関わり、ご相談もよく受けております。中には留学生や、その関係者、就職予定先企業の方々からのご相談もありますが、そんな私がいつも思い、日本に来ている外国人留学生の方々に言いたいこと があります。それは…。

 日本での就職活動は もっと早く始めるべき! ということです。

 毎年2月・3月になると、青い顔をした留学生が当事務所にかけ込んで来ます。
「まだ就職先が決まっていないが、日本に在留し続けたい」 「就職した会社で就労ヴィザへの変更申請をしたが、不許可になった」等々。そのため毎年早春は、うちの事務所が忙しくなる季節です。

 日本人でも学生によっては、4年制大学の3年生になった4月ぐらいから、実質的な就職活動を始めているのが実態です。しかし多くの外国人留学生が、こうした事情を知らないことや、日本での進路に迷っていること。日頃のアルバイト等、生活費稼ぎのために忙しいこと(本来あってはならないことですが…)などが原因で、卒業間近に就職活動を始めている場合が多いように思います。外国人留学生の方々は、日本人学生に比べ様々なハンディがあり、そうでなくても今の日本は不況から完全に抜け出したとはいえない状態です。せめて、あなたの周りの日本人学生と同じぐらい早く就職活動を始めるべきです。
(註:ちなみに“あなたの周りにいる日本人学生”ですが、最近は就職活動を全くしない、卒業後フリーターになるつもりの学生 も多いですので、その点ご注意を!)
 

 また、留学生の場合、就職活動は 早く始めればいい というだけではありません
 通常、日本の大学・短大・大学院等を卒業した外国人の方が日本国内の一般企業に就職する場合、その就労のために与えられる在留資格は 『人文知識・国際業務』 か 『技術』 です(もちろん例外はあります)。そしてこれらのヴィザは、出来る仕事の種類が専門的な分野に限られていて、どんな仕事でも出来る という在留資格ではありません。つまり外国人留学生の場合、日本人の学生とは違い、『とにかく就職先を見つければいいや』 というものでは無いのです

 就職先を見つけ、自身満々で在留資格変更許可申請をしたが、入管から不許可にされた というケースが、いかに多いことか…。たとえ、就職先会社の社長さんが入管へ頼みに行ったとしても、『在留資格の該当性が無い』 と言われてしまうだけです。
 この辺りを考えて就職活動を始めないと、全て無駄な努力になってしまいます。ただこれは、決して難しいことを言っている訳ではなく、就労ヴィザを取りたいなら、あなたが日本や母国の大学等で学んだことや、母国語を使って活躍出来る仕事を探してください ということです(これにも例外がありますが)。



 よく、働くためのヴィザを持っている外国人の方に「あなたの在留資格は何ですか?」と質問したとき、「労働ヴィザです」とか「ワーキング・ヴィザです」という答えが返って来ることがあります。確かに間違いではないのですが、「労働ヴィザ」も細かく種類が分かれていて、そのヴィザの種類により、出来る仕事の範囲が違ってくるのです。通訳や貿易業務、文系の知識を活かせる仕事なら『人文知識・国際業務』、エンジニアなど理科系の知識を活かせる仕事なら『技術』(註:但しIT・情報技術関連の仕事に付く場合、『人文知識・国際業務』を与えられる場合もあります)、コックさんなら『技能』、芸術関係なら『芸術』 と、働くためのヴィザにもいろいろな種類があり、仕事の内容により、与えられるヴィザの種類が決まって来ます。
 前述のように、留学生が卒業後得られる在留資格はほとんどが、『人文知識・国際業務』『技術』です。

 また、日本人や、就労制限のない在留資格(どんな仕事でも出来るヴィザ。『永住』、『日本人の配偶者等』、『定住者』など)を持つ外国人の場合、卒業後定職に付かない いわゆるフリーター でも許されますが、そうしたヴィザを持っていない一般の外国人留学生については、フリーターとして日本に在留し続けることは許されません。専門的な、高度な仕事をするために就職しなければ、就労ヴィザへの在留資格変更許可申請は出来ません。また、留学ヴィザの期限がまだ数ヵ月残っていたとしても、実は卒業と同時に日本での在留資格該当性を失っている状態であり、直ちに就労ヴィザ、または他のヴィザへの在留資格変更許可申請をするか、大学院等への進学により在留期間更新許可申請をするか のどちらかをお勧めします(もっとも卒業が決まった頃には、もう大学院等の入学申し込み期限が終わっている場合が多いですが)。


『留学生・卒業後の就職活動を目的とした日本滞在について』

 2004年2月、画期的な入管法改正が成されました。留学生が、上記のような事情から卒業時までに日本での適正な就職先を見つけることが出来ず(就労ヴィザへの変更が出来ず)、帰国せざるをえないケースが多かったため、『卒業前から就職活動を行い、就職活動を続けていること』 『大学から推薦をもらうこと』などを条件とし、卒業後も引き続き、就職活動のために日本で滞在すること(在留資格『短期滞在』。最大180日まで更新を認める)が認められるようになりました。その間の『資格外活動許可(1週間28時間以内)』まで認められるという、留学生側にとっては非常にありがたい内容になっていると思います。

 但し、留学生の方たちは、これに安心せずに就職活動は早めにスタートさせてください。また、もし留学生によるこの制度の『悪用』(例えば、就職活動もせずに 単に資格外活動(アルバイト)を目的とした滞在等)が多くなったりすれば、将来、この有利な制度を認められなくなる可能性もあります(入管行政では、よくあることです)。状況を見て、“ある一定の国・一定の学校の留学生にだけは、この制度を認めなくなる”といった処置も有り得ます。本人たちも困りますが、それ以上に後輩の留学生たちに迷惑がかかります。ご注意ください。





 ちなみに、日本の大学や大学院を卒業した外国人の場合その要件をもって(日本の大学を卒業したことによって)、就労ヴィザを取得したい場合、卒業後母国へ帰国して後 数ヵ月、数年経った後でも、就労ヴィザを申請することは出来ます。つまり、卒業と同時に就職が出来なくても、また後でチャンスはある訳です。
 一方、日本の専門学校を卒業した外国人留学生も、学んだことに関連する仕事であれば、就職して就労ヴィザへの変更をすることが出来ます(註)が、専門学校を卒業して就職し、その要件をもって(日本の専門学校を卒業したことによって)日本での就労ヴィザを取得したい場合、卒業後直ちに在留資格変更許可申請をしなければなりません(註:但し、専門学校卒業時に『専門士』の資格を付与されていることが条件となっています)
 現行法では、専門学校卒業後一度帰国してしまってからでは、もう就労ヴィザを取得することが出来なくなるからです。もちろん、日本の学校卒業とは別の要件で(母国での学歴、職歴、資格等により)就労ヴィザを申請出来る場合もありますが。

 ただ、大学や大学院を卒業する外国人の方々も、専門学校卒業生と同じように、卒業と同時に就労ヴィザへの在留資格変更をすることが望ましい と私は思います。日本に入って来たときパスポートに押された『上陸許可』の日付が、ゼロに戻ってしまうからです。そのためにも、どうせ日本で就職して働いてみたい と考えているなら、就職活動は早めに、また就職予定先の業務内容を的確に判断して、卒業と同時に在留資格変更許可申請を出来るよう準備しておくべきだ と私は考えています。せっかく、頑張って日本の学校を卒業したのに、“就職先が見つからなかったから”、“就職した会社でのヴィザ変更が、入管から認められなかったから” といった理由で帰国しなければならないのは、ちょっと残念ですから。



 このページでは、今後も在日外国人留学生の方々へのアドバイスを思いつくまま書いていく予定です。尚、上記の事柄についてですが、たとえ高度で専門的な、『人文知識・国際業務』『技術』の内容に合った仕事に付いたとしても、在留資格変更が不許可になる場合もあります。会社の財務状況や、既に雇用されている人員の数、過去に会社が犯した違反事項など、原因と成り得るものはいくつもあります。この辺りにも注意する必要があります。


 最後に…。私自身、過去にアメリカに住み、“一人の外国人として” 異国に住んだ経験があります。当然、アメリカのヴィザのことでも、大変苦労しました。
 その国の市民権を持った人たちとは違い、外国人という立場がいかに弱いものか…。しかし、これについて嘆いても、仕方がありません。あなたが外国人として、日本という “外国” に住み続けていく以上、ヴィザの問題は常に付いて回ります。その国の市民権を持った人たち(この場合、あなたの周りにいる日本人たち)以上に、頑張る必要がある ということを忘れないで下さい。


中国人留学生 就職・転職希望者対象 合同企業説明会』案内(2006.7月 名古屋吹上ホール)


INDEX  行政書士・社会保険労務士 名古屋国際綜合事務所  外国人との共生社会へのプロセス

知っておきたい 国際結婚の手続と知識  最近の『在留特別許可』及び『上陸特別許可』の傾向について

『帰化申請』について思うこと  Attention ! 在日外国人とその関係者をたぶらかす、ブローカーにご用心!(日本語・中文・韓國語)

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