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『名古屋圏在住の外国人について』
中部大学国際人間学研究所編『アリーナ』表紙
 このエッセイは、愛知県の中部大学国際関係学部 国際人間学研究所のご依頼により、株式会社 人間社 発刊 『アリーナ』(「名古屋のカルチュラル・スタディズ」)に寄稿したものを、そのまま載せております(2004年11月作成)。

 中部大学の先生を始め 関係者の方々には、なんともアカデミックなこのような書籍に、私の文章を載せて頂き 感謝するとともに…
「本当に こんなんでいいの?(^^;」 と、その冒険心に感服しております。


 名古屋・東海地区は「モノづくりの地域」とよくいわれているが、それは在住外国人の実態にも反映されている。例えば、工場内で働く人などが多い日系ブラジル人は、都道府県別に見れば愛知県に最も多く在住し、特に愛知県東部(三河地区)から静岡県西部(浜松市他)にかけての地域には、ところどころ「ブラジル人コミュニティ」ともいえるものが発達している。また 岐阜県には、地場産業であるアパレル業種を中心に、中国やヴェトナム他からの外国人研修生(在留資格『研修』)、技能実習生(在留資格『特定活動』)が多く入って来ており、在留資格別 外国人登録数が全国1位となっている。

一方、名古屋市域 及び 衛星都市には、比較的 多国籍の在住外国人がいる。前述の南米日系人の他、就労ヴィザ(在留資格『人文知識・国際業務』、『技術』、『技能』等々)を持つ 主としてアジア、欧米諸国出身外国人とその家族、日本人他との結婚や身分的繋がりにより滞在している外国人(在留資格『日本人の配偶者等』、『定住者』等)、日系中国人(いわゆる中国残留孤児とその家族)、大学他の留学生(在留資格『留学』)や日本語学校生(在留資格『就学』)など多様であるが、残念ながら東京大久保のコリアン・タウン、横浜の中華街のような 本格的なエスニック・タウンといえるようなところは、まだ存在しない。

もちろん 上記はあくまでも「傾向」であって、「名古屋市内に研修生が全くいない」といったことでは 決してない。また、この他にも多くの不法滞在・不法就労外国人(主としてアジア諸国出身、一部はアフリカ・中南米諸国出身)が、東海の工場密集地域において ヴィザを持つ南米出身日系人と“混在して働いている”実態があり、名古屋市内繁華街において 多くのアジア、東欧諸国出身女性が“不法就労や資格外活動をしている”実態がある。

もうひとつ言えることは、東京圏と違い、同じ国の出身者であっても その出身地域(地方や州、省など)に偏りが見られること。これは、先に来た者が同郷からの親類や知人・技能者を招聘・紹介し、また後から来る者も同郷出身者を頼って同じ地域(名古屋圏)に集まって来るからで、ごく自然なことと思われる。例えば「在名中国人でも特に一部の省や東北三省出身者が」、「トルコ人でも特に黒海沿岸地域出身者が」多い といった具合で、これは戦中・戦後に定着した朝鮮半島出身の特別永住者(いわゆる 在日コリアン)の人たちについてもいえることだ。実際、帰化申請等のため 名古屋圏の在日コリアンの人たちの韓国戸籍を扱っていても、7割方は「慶尚南道・北道」に本籍があり、戦中・戦後から 遠い異国へ来ていた人たちの『同郷意識』が強かったことが窺える(註:大阪の在日コリアンでは「済州島」出身者の方が圧倒的に多くなる)。
 余談だが、地域により在住外国人の傾向が違って来るのは
何も名古屋だけではないし、日本だけでもない。例えば、アメリカで『フィリピン人女性』といえば、真っ先に思い浮かぶのは『看護婦さん』であり、日本とは違うように思える(註:日本も今後は、フィリピン他からの外国人看護師が増えていくと予想される)。また、日本には多くのパキスタン人やアラブ系、ロシア人の『中古車輸出・販売業者』がいるが、これも、彼らにとっての「宝の山」日本ならでは と私は考えている。自国・自分の住む地域にいる外国人だけを見て、その国の人全体のイメージを決めてしまうようなことは、日本人に限らずよくあるのではないだろうか。

私は、入管・国際業務専門の行政書士として、もっぱら外国人招聘・雇用・在留手続や対日投資サポート(外国企業による日本営業所・日本法人設立、経営ヴィザ取得、ビジネス開始時の許認可取得等)、国際結婚・離婚等 渉外戸籍、不法滞在外国人が特別な事情の下で行う 在留特別許可嘆願手続など、常に外国人との接点で仕事をして来た。そんな私が日々感じるのは、もはや様々な職種で「外国人と無縁である」とは言えなくなっていることだ。日本は人口も減っていき(個人的には半分くらいが適正だと思うが…)、就労人口の激減や いわゆる3K職種の敬遠は深刻なことと受け取られている。常に「実態先行型」ではあるが、日本政府も将来 入管行政を利用して 専門職から一般的な職種、農業に至るまで、外国人を積極的に活用していくより他ない と感じているはずだ。例えば『介護』だが、今までは 国内有資格者団体等からの反発や、主として介護を必要とする年配の方々からの憂慮の声もあり、長く「外国人を」という声は聞かれなかった。しかし、政府は限定的にではあるが、2004年よりタイやフィリピンからの介護業務従事者受入れをスタートさせた。現段階ではあくまでもパイロット・ケースだが、超高齢化社会であることを思うと、今後『介護』に当る在留資格が創設され、多くの外国人が受け入れられるであろうことが 容易に想像出来る(註:政府は現在、在留資格『特定活動』をもって介護士・看護師業務に従事する外国人に就労資格を与えることを検討している。ちなみにこの『特定活動』という在留資格は、他にワーキング・ホリデー利用者、技能実習生、定住外国人の老親なども含まれ、試験的・時限的・例外的に使われる向きが多いといえる)。「外国人に介護してもらうのは不安だ」とか、そんなことを言っていられる場合ではない。背に腹は変えられない のだ。数年前、後手 後手に回っていた日本政府が、ようやく外国人IT技術者の確保に腰を上げた頃(入国要件を弱冠緩和した)、アメリカなどは 中国やインドの理工系大学にコンピューターを提供し、既に「青田刈り」を実行して数年が経っていた。外国人・入管行政についても、『民』に引っ張られるのではなく、もっと積極的な展開を始めるべき と私個人は考えている。

最後に、何故この仕事を始めたか について、ここで触れておきたい。以前、アメリカ(カリフォルニア州北部)に住んでいたが、カリフォルニア都市部やニューヨークともなれば、南部や中西部と違い 様々な人種がモザイクのように暮らし、実際 自宅の周囲5km以内でも 小さなチャイナ・タウンやコリアン・タウン、ヴェトナム、タイ、メキシコ、イラン、アラブ系の店、ユダヤ系のシナゴーグ、ロシア系住民が集まるロシア正教会。アイリッシュのお祭り(セント・パトリック祭)なども盛んで、アパートのオーナーはギリシャ系、中国系、ルームメイトはドイツ系、イタリア系、ユダヤ系…と、自分の周りだけ見ても実に民族色豊かだったのだ。
 帰国後
妻の実家のある名古屋圏に暮らし始め、この仕事を始めた。表向きの開業理由はいつも「アメリカで一人の外国人として苦労したため、日本で頑張る外国人を助けたくて始めた」などと言っている。その方が「ウケ」がいいからだが、実はそんなに ボランティア精神は無いのだ。名古屋を少しでも、「民族色豊かな街」、それも「人種が混ざり 溶け合ってしまうブラジル型の『メルティング・ポット』ではなく、『モザイク』『サラダ・ボウル』のように 多くの国の人たちがそれぞれ“自国のままの生活スタイルで暮らせる街・エスニック・タウン”を多く抱える都市に近づけたい」というのが、本当の開業理由だ。この開業理念(?)は前述のとおりなかなかうまくいってはいないが、今後も名古屋を中心に在日外国人たちに深く関わり、交流・観察を続けていきたい。


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